聖書の歴史 D-5 聖書の歴史 目次 

エウセビウスが作った50冊の聖書 》

フロイド・N・ジョーンズ博士

 紀元331年コンスタンティヌス(ローマ帝国の皇帝)はエウセビウスに対し、50冊の聖書を用意するよう指示しました。彼がコンスタンチノープルに建設を予定していた新たな教会に、それらの聖書を置くためでした。エウセビウスはそれを実行しました注1

聖書の写本の準備に関する、コンスタンティヌスからエウセビウスへの手紙

“…I have thought it expedient to instruct your Prudence to order fifty copies of the sacred Scriptures50冊の聖書)…
 … to be careful to furnish all things necessary for the preparation of such copiesそれらの写本の準備のために必要などんなものも与える)…」



● オリゲネスの著作から作り出された50冊の「聖書」

 問題は、エウセビウスがコンスタンティヌスのためにその50冊の聖書を用意する際、ガイドとして何を用いたかです。
 エウセビウスは、「オリゲネスこそ最も偉大な人物」と考えていました。
 彼はオリゲネスの書状を800通収集し、オリゲネスの『ヘクサプラ』を用いたと述べています。
 こうして、エウセビウスは旧約聖書のためにオリゲネスの『ヘクサプラ』の第五欄(※)を選択したのです。(※ アイラ・M・プライス博士[古代言語・文献学教授]著『英語聖書の起源』) 注2

 そして彼は、外典アポクリファ。ヘブル語の正典に含まれていない数々の書。第一、第二エスドラス書、トビト書、ユデト書、エステル記続編、ソロモンの知恵書、ベルと竜、第一、第二マカベア書、バルク書など)を付け加え、さらに、オリゲネス編集の新約聖書を使って完成させました。

《オリゲネス自作の旧新約聖書》
オリゲネス自作の旧約聖書:「ヘクサプラ」(245年)
 第一欄=ヘブル語聖書
 第五欄=オリゲネス自作旧約聖書(ギリシャ語。外典
 他の三欄=エビオン派(異端)の人々によるギリシャ語訳
オリゲネス自作の新約聖書
オリゲネス自作旧新約聖書は、
 エウセビウスによる50冊の聖書、ヒエロニムスによるウルガタ聖書にも使われた。



《オリゲネス》
オリゲネス
オリゲネス作成の「改ざんギリシャ語新約聖書」
↓     
↓     
↓     
エウセビウスの50冊の「改ざん聖書」(331年)
バチカン写本・シナイ写本
                     
                     
■ヒエロニムス作成の
「ラテン語ウルガタ聖書」(405年)
(ローマ・カトリックの聖書)


● 上等のベラム皮紙で作られた「聖書」

 これらの写本は、『立派なベラム皮紙』上等の皮紙)で、ローマ政府の印も記されて、コンスタンティンのために用意されました。
 この『ベラム』(動物の皮)は、とても上等なものであり、皮紙二枚を作るだけのために一頭のカモシカが使われるほどでした。
 このような事業のために十分な資金を持っていたのは王室だけであったはずです。

………………………
注1) 『聖書の写本の準備に関する、コンスタンティヌスからエウセビウスへの手紙

“…I have thought it expedient to instruct your Prudence to order fifty copies of the sacred Scriptures聖書の50冊の写本), the provision and use of which you know to be most needful for the instruction of the Church, to be written on prepared parchment in a legible manner, and in a convenient, portable form, by professional transcribers thoroughly practiced in their art.
 The catholicus of the diocese has also received instructions by letter from our Clemency to be careful to furnish all things necessary for the preparation of such copiesそれらの写本の準備のために必要などんなものも与える)…」


注2)Ira M.Price,"The Ancestry of our English Bible",p.70


《出典 : Floyd Nolen Jones,"Which Version Is The Bible?"[2006年] 》  




《『エウセビウス-オリゲネス版』聖書》


ベンジャミン・G・ウィルキンソン博士はこう述べています。

 「紀元312年、コンスタンティヌスはローマ帝国の皇帝になりました。
 それからしばらくして、彼は自分自身のためにも、また彼の帝国のためにもキリスト教を受容しました。
 異教の宗教とキリスト教との融合をもたらそうとしていた彼が見出したのは、優劣を競う三つのタイプの聖書でした。
 すなわち、後にTR(テクストゥス・レセプトゥス)となる本文によるコンスタンチノープルの聖書、パレスチナの『エウセビウス-オリゲネス版』聖書、および、エジプト版聖書でした。
 特に、後にTRとなる聖書本文を主張する人々と、『エウセビウス-オリゲネス版』本文を主張する人々との間の争いは熾烈でした。後にTRとなる聖書本文の擁護者たちは、比較的質素な階級に属し、初代教会にならうことを熱心に求めている人々でした。

 『エウセビウス-オリゲネス版』本文は、純粋な神のことばと、オリゲネスの思いの中にあったギリシャ哲学とが混ざった産物でした。それは、『神のことばをグノーシス主義に適合させたもの』と呼べるかもしれません。

50冊の聖書に関わる人々
オリゲネス
  • 広範囲に旅をし、どこでもギリシャ語の新約聖書を見つけると、それを自分の教理にぴったり合うように改ざんした。
  • 新プラトン主義の創始者から教えを受けた。
  • イエスは一人の被造物にすぎないと信じた。
  • 前世からの生まれ変わり』を信じた。
  • 「洗礼による生まれ変わり」(人は水のバプテスマによって救われるという信念)を信じた。
  • 「人は罪のない者となるために、煉獄(れんごく)に行かなければならない」と信じた。
エウセビウス
  • アリウス派
  • アリウスの友人
  • イエスは肉において来られた神ではない
    と信じていた
  • オリゲネスこそ最も偉大な人物」と考えた
ローマ皇帝コンスタンティヌス
  • ローマの神秘カルトの高位の祭司
  • 妻と息子をも殺害
  • 太陽崇拝者たちの高位の祭司
  • 貨幣にアポロ(ニムロデ)像刻印
  • 異教の魔法を信奉
  • 追放されたアリウス復帰を許可
コンスタンティヌス二世
 彼が任命した主教たち
  • アリウス派


 コンスタンティヌス帝はキリスト教を受容したため、彼はそれらの数々の聖書のうちのいずれかの聖書を選択することが必要となりました。ごく自然に、彼は、『オリゲネスによって書かれ、エウセビウスによって編集されたもの』を好みました。
 オリゲネスは、彼の哲学によってキリスト教をグノーシス主義と結合させた、知的に優れた人物でした。ちょうど、コンスタンティヌス自身も、異教の国家であるローマにキリスト教を結合させようとする政治的天才であったようにです。
 コンスタンティヌスが好んだタイプの聖書とは、キリスト教界について彼の帝国主義的な概念の土台を与えてくれるような『読み方』のある聖書でした。
 オリゲネスの哲学は、コンスタンティヌス『宗教と政治』の神政政治に役立てるために、ぴったり適合していました。
 エウセビウスは『オリゲネスの大称賛者』であり、彼の哲学を深く学んだ人でした。
 彼は、『オリゲネス版の聖書』である『ヘクサプラ』の第五欄を編纂したばかりでした。
 コンスタンティヌスはこれを選び、50冊の聖書を用意するよう要請しました」

ベンジャミン・G・ウィルキンソン博士著『立証された欽定版聖書』第二章
Our Authorized Bible Vindicated 



さらに深い理解のために(英語)
フロイド・ノレン・ジョーンズ博士の著書
→ "Which Version Is The Bible?"(2010年版) p.103~[PDF]




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