聖書の歴史 B-6 聖書の歴史 目次 

《ローマ帝国 東西分裂後聖書

フロイド・N・ジョーンズ博士

東方教会のTR聖書と、西方教会のウルガタ聖書
 教会が東方(ギリシャ語)と西方(ラテン語)に分かれると、東方教会ではギリシャ語のTR(テクストゥス・レセプトゥス)が標準になりました。
(その結果、ギリシャ正教会の公式本文として採用されていました)
 しかし、西方教会ではヒエロニムスの「ラテン語ウルガタ聖書」を固持しました。

TR聖書の流れ》

手書きの原本(新約:紀元50年〜95年頃)
世界最古の写本…マグダレン写本(紀元 66年 TRと合致)
古ラテン語聖書(150年頃 TRと合致)
古シリア語聖書(150年頃 TRと合致)
ディアテッサロン(153年〜172年頃 TRと合致)
ワルドー派の聖書TRと合致)
教父たちによる引用
聖句集(400年頃〜 100%TRと合致)

古代のギリシャ語写本99%TRと合致
《99パーセント超の多数派写本》
    
  
   
  


東方教会: ギリシャ語のTRが標準
後にTRとして集大成される本文
TR聖書

TR聖書の流れ》

《オリゲネス》
オリゲネス
オリゲネス聖書
《オリゲネス自作の旧新約聖書》(三世紀)
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『エウセビウス-オリゲネス版』聖書
エウセビウスの「50冊の聖書」(331年)
エウセビウス-オリゲネス版
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ヒエロニムス作成の「ラテン語ウルガタ聖書」(405年)
ラテン語ウルガタ聖書

西方教会:ヒエロニムス作成の「ラテン語ウルガタ聖書」を固持

ローマ・カトリック公式「聖書」(1546年)

 その結果、東方教会と西方教会の間で進展していった憎悪は、単なる教理上の議論を越えたものとなっていきました。
 いずれの側も、相手の側が用いている写本は腐敗している(改ざんされている)と確信するようになりました。
 つまり、それらの読み方が必ずしも同じではなかったため、東方のギリシャ圏の人々はその『ラテン語ウルガタ聖書』に不信感を抱くようになり、西方のラテン圏の人々も同じく、ギリシャ圏の人々が彼らの本文を改ざんしたのだと確信するようになりました。
 どちらの聖書も、それぞれの社会では権威あるものであり続け、両者は、自分たちの聖書こそ真の最初からの聖なる本文であると主張しました。
 こうして二つの別個の『聖なる書」が出現したのです。

● 東西教会間の反目
 この憎悪は五世紀まで続き、いっそう高まっていきました。
 五世紀になると、ローマ教皇は、ギリシャ語およびギリシャ語の文書が西方ヨーロッパに流入するのを制限しました。注1
 千年近くの間(紀元約476年〜1453年)、東方の過去のすべての宝物(その記録、歴史、考古学、文学、科学など)は、西方には翻訳されないまま、そして利用されないままでした。
 ギリシャ語はヨーロッパ西部では外国語となりました。なぜなら、聖職者たちがギリシャ語の研究は悪魔の研究だと宣言し、それを促進した人々をみな迫害したからです。注2
 概して、西方はもっぱらラテン語となり、東方とは疎遠になりました。
 西方にベールを掛け、あの暗黒時代(476年〜1453年)に突入させることに大いに貢献したのは、そのように過去の業績にいつまでも反対し続けたことでした。
 この暗黒の支配が続いたのは、1453年の半世紀前まででした。それは、ギリシャ語圏の人々が、トルコから洪水のように押し寄せる侵入者たちから逃れ、彼らの言語と文学と文化を携えて西方に来た時でした。注3
 この分離と分裂と孤立の時期、この二つの社会(東方西方)のそれぞれの地域で、聖書は教会人(修道士、司祭、主教)たちにより、教会独自の所有物として解釈され、コピーされ、配布されました。
 そして、どちらの側も、自分たちこそ『聖なる本文』に取り組んでいると確信していたのです。

西方教会の『ラテン語ウルガタ聖書』を退けたエラスムスたち
エラスムス
《エラスムス》
 エラスムスがその西方教会の「本文」を決定的に中断させたのは、十六世紀になってからでした。注4
 エラスムスは、それを、東方教会「ギリシャ語新約聖書正典」および「本文」(=ギリシャ語のTR)と入れ替えたのです。
 エラスムスも、ロレンツォ・バラ(約1406年〜1457年。任職されたイタリア人司祭であり、おそらく、ルネサンス期で最も聡明な知性の持ち主でした)も、中世ローマ・カトリック教会が「聖なる本文」としていた「ラテン語ウルガタ聖書」退けました注5

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注1)Wilkinson著書 pp.44-45
注2)Froude,"Life and Letters of Erasmus" ,pp.74,187,294,256
注3)Wilkinson著書 p.44
注4)Letis,"Brevard Childs and the Protestant Dogmaticians",p.4
注5)同書 p.7


《出典 : Floyd Nolen Jones,"Which Version Is The Bible?"[2006年] 》  

さらに深い理解のために(英語)
フロイド・ノレン・ジョーンズ博士の著書
→ "Which Version Is The Bible?"(2010年版) p.170~,199~[PDFファイル]



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