聖書の歴史 F-2 聖書の歴史 目次 

七十人訳聖書だれかの想像の産物

サミュエル・C・ギップ博士

: 『七十人訳聖書』とは何でしょうか?
: だれかの想像の産物です。

唯一の根拠『アリステアスの手紙』

 初めに、この『七十人訳聖書』がどういうものと考えられているのか、それを定義することにしましょう。
 『アリステアスの手紙』と呼ばれる古代文書の中に、ヘブル語の旧約聖書の『公式な』ギリシャ語翻訳聖書を作る計画が明らかにされています。
 この翻訳聖書は、ユダヤ人たちの『公式な』聖書として受け入れられることになっており、ヘブル語旧約聖書取って代わることになっていました。
 この翻訳作業は、イスラエルの12部族からそれぞれ6人ずつの、合計72人ユダヤ人学者たち(?)によって行われることとされていました。
 この作業の場所は、エジプトアレクサンドリアとされていました。
 この翻訳の年代は、BC(紀元前)250年ごろとされていました。それは、BC397年の旧約聖書の終結からキリスト誕生までの約400年の中に位置します。

 この神秘的な文書(『七十人訳聖書』)が紀元前の時代に実在したと主張する唯一の根拠は、『アリステアスの手紙』と呼ばれるものだけです。
 BC250年にも、それに近い時期にも、『ギリシャ語旧約聖書』写本など全く一つも存在しないのです。
 ユダヤ人の歴史においても、そのような翻訳作業が企画されたり実施されたというどんな記録も存在しません。

オリゲネス『ヘクサプラ』

 このような文書(『七十人訳聖書』)が実在したことの確かな根拠を作り出そうとして、学者たちがすぐに指摘するのは、オリゲネス(紀元185年頃〜254年頃)の『ヘクサプラ』(改ざん旧約聖書)です。
オリゲネス
オリゲネス】 (AD185年頃〜254年頃) 彼は、エジプトのアレクサンドリアにある学校(ギリシャ哲学者パンタエヌスが設立)の第三代の校長であった。 彼は広範囲に旅をし、どこでもギリシャ語の新約聖書を見つけると、それを自分の教理にぴったり合うように改ざんした。オリゲネスは、聖書は文字通りに解釈するものではないと信じ、『寓話的解釈の父』であった。→詳細

 それは、AD(紀元後)3世紀に書かれたものです。すなわち、この紀元前『七十人訳聖書』が記されたとされている時期(BC250年ごろ)より数百年も後代であり、新約聖書が完結してから100年以上も後のことです。

 オリゲネスのヘクサプラには、彼自身(72人のユダヤ人学者たちでは全くありません)のギリシャ語翻訳版の旧約聖書が入れられており、それには、『ベルと竜』、『ユデト書』、『トビト書のような数々のいいかげんな書物や、ローマ・カトリック教会によってのみ権威あるものとして受け入れられている数々の外典の書物も含まれています。
 目に見えない存在物である『七十人訳聖書』を擁護する人々は、「オリゲネスはヘブル語聖書をギリシャ語に翻訳したのではなく、紀元前『七十人訳聖書』書き写して自分の『ヘクサプラ』に入れただけである」と主張しようとします。
 この主張は正当であり得るでしょうか?
 あり得ません。もしそれが正当であるなら、それら外典の内容が書物として書き記されるよりも前に、その72人の抜け目のないユダヤ人学者たちが自分たちの作品に、『ベルと竜』、『ユデト書』、『トビト書のような数々のいいかげんな書物や数々の外典付け加えたことを意味します!
 そうでないとするなら、オリゲネスがそういう数々のいいかげんな書物を神の聖なることばに自由に付け加えたのです(黙示録22・18)。
 このように、ヘクサプラは、旧約聖書をオリゲネス自身がギリシャ語に翻訳したものであり、それ以上の何物でもないことがわかります。

逸脱した想像による産物

 エウセビウス(〜AD340年 異端のアリウス派)もフィロンも、二人とも怪しげな人物ですが、ギリシャ語のモーセ五書のことに言及しています。旧約聖書全体ではありません。また、それが公式に受け入れられた翻訳であるようなことは何も述べられていません。
フィロン
フィロン(フィロ)】 (BC20年頃〜AD50年頃) エジプトのアレクサンドリアに在住したユダヤ人。グノーシス派哲学的神秘主義者。彼は、聖書は文字通りに理解してはいけないと信じた。彼は、聖書を『寓話(ぐうわ)的』に理解する方法を開始し、後にオリゲネスがそれにならった。
 フィロン『寓話的』・『比喩的』解釈により旧約聖書に関する数多くの書を著した。

 キリストの時代より前に書かれたとされる『ギリシャ語の旧約聖書』写本は何か存在するでしょうか?
 あります。それは、BC150年のものとされる非常に小さな切れ端の、『ライランド・パピルス 458』です。
 それは、申命記23〜28章を含むものですが、それ以外に何一つ存在しません。
 エウセビウスフィロンが、「異邦人たちにユダヤ人の歴史に関心を持たせようとして、モーセ五書全体は、だれか記述者によってギリシャ語に翻訳されていた」と考えるに至ったのは、この断片が存在したためであったからかもしれません。
 しかし、その一断片『公式な』『ギリシャ語翻訳版旧約聖書』の一部であるということは決してあり得ません。BC250年にその作業のために選ばれたとされるあの72人のユダヤ人学者たちは、BC150年には死んでいたはずだからです。

偽名の著者

 紀元前にそのような翻訳聖書が作られたと信じるべき理由が全く存在しないだけではありません。
 『アリステアスの手紙』オリゲネスの『ヘクサプラ』、『ライランド・パピルス 458』、およびエウセビウスフィロンの言及があっても、決して明らかにすることのできないことがいくつもあるのです。
 その第一は、『アリステアスの手紙』自体です。
 これが『アリステアス』という名前の人物によって書かれたのではないことは、今日の学者たちの間でも疑問の余地がありません。
 事実、その真の著者はフィロン(BC20年頃〜AD50年頃)であると信じる人々もいます。
 その場合、『アリステアスの手紙』の年代は紀元後となります。

あり得ない公式翻訳作業

 もしアリステアスという人物が実在したとすれば、彼は二つの克服できない問題に直面したはずです。
 第一に、彼は12部族からそれぞれ6人の代表となる学者たちを選び出すために、いったいどうやって、その12部族の場所を突き止めたのでしょう?
 彼らは幾度も敗北し、捕囚となったことによって散らされてきたため、12部族の境界線が実質的に存在しなくなってから長い期間がたっていました。
 この12部族をはっきり特定することは、だれにとっても不可能だったはずです。

 第二に、その12部族が特定されていたとしても、二つの抗しがたい理由により、彼らはそのような翻訳作業を引き受けなかったはずです。
  1. どのユダヤ人も、聖書公式な『管理人』は、申命記17・18、31・25、26、マラキ2・7で証言されている通り、レビ族であることを知っていました。
     こうして、それ以外の11部族のユダヤ人はだれも、あえてそのような禁じられている企てには参加しなかったはずです。
  2. ユダヤ人が周囲の異邦の国々とは顕著に異なる人々であることは、聖書のどの読者にとっても明らかです。
     割礼や安息日礼拝などのような顕著な行い、清めについてのさまざまな規定、および彼ら自身の祖国は、彼らに与えられました。
     それに加えて、ヘブル語という遺産があります。
     今日でも、中国やインドに在住の、厳格に実践するユダヤ人は、自分の子どもにヘブル語以外のどんな言語を教えることも拒んでいます。
     エチオピアのファラシャ族のユダヤ人たちが、この国の数多くの部族の中でも顕著な存在であるのは、彼らがヘブル語を、自分たちのユダヤ人としての遺産を証しするものとして大切に保持しているという事実によるものです。

 かつて異邦人のことを『犬』にすぎないものとみなしたユダヤ人たちが、彼らの遺産であるヘブル語異邦人の言語のために喜んで見捨て、全所有物の中で最も聖なる所有物である自分たちの聖書を、その異邦人の言語に翻訳されるようにした、と私たちは単純に信じるのでしょうか?
 そのような推測は、不条理であるとともに、狂気じみてもいます。

聖霊の自由な引用

 こう尋ねる人がいるかもしれません。
 「では、『現代版新約聖書』の中には、旧約聖書の七十人訳聖書からの『引用』とされるものが多くありますが、それについてはどうなのですか?」と。
 彼らの言及する『七十人訳聖書』とは、オリゲネス(紀元185年頃〜254年頃)が作ったヘクサプラ以外の何物でもないのです。

 真の『新約聖書』の数々の引用箇所は、どんな紀元前 『七十人訳聖書』からの引用でも、『ヘクサプラ』からの引用でもありません。
 それらは、その著者であられる聖霊が、ご自分がよしとされる仕方で、ヘブル語旧約聖書の中にあるご自分の作品(記述)から自由に引用しておられるものなのです。
 そして私たちは、不存在の『七十人訳聖書』から聖霊が引用されることは決してないと確信することができるのです。

"What is the LXX?"(『七十人訳聖書とは何か?』 サミュエル・C・ギップ博士 www.chick.com)より抜粋


さらに深い理解のために(英語)
What is the LXX?
 (『七十人訳聖書とは何か?』 サミュエル・C・ギップ博士
The Answer Book
 (サミュエル・C・ギップ博士の62の聖書Q&A)



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