聖書の歴史D-3【1】　聖書の歴史目次　

《マソラ本文_問題視されたことのない基準本文》

【1】写字者たちに課せられた厳格な規定

■神の信託を受けたユダヤ人のレビ人たち

　D-2で見た通り、旧約聖書の時代、レビ族の祭司たちが神のことばを書き写し、保持してきました。

　筆記者はみなレビ族に属していました。（マラキ２・７、申命記31・25、申命記17・18参照）

神の信託を受けたユダヤ人のレビ人たち

マソラ本文に基づく聖書
キング・ジェームズ版聖書

■ユダヤ人が旧約聖書の巻物を書き写す際に用いられた規定

　彼らが会堂（シナゴグ）の旧約聖書の巻物を書き写す際に用いられた規定は以下の通りです。これらの規定は、ユダヤ教の聖典とされる『タルムード』に記されているものです。
　H. S.ミラー博士は、その数々の規定を次のように紹介しています。

羊皮紙は、聖い動物の皮から作られたものでなければならず、ユダヤ人によってのみ用意されたものでなければならない。
その皮は、聖い動物から取られた紐（ひも）で、しっかり結び付けられたものでなければならない。

どの欄も、48列以上、60列以内でなければならない。…
インクは黒以外のものであってはならない。それは、特別な調合にしたがって用意されたものでなければならない。

記憶から一語でも一文字でも書くことはできない。
筆記者の前には真正の写本がなければならない。
彼は、それを書く前に、一つ一つの語を読んで、声に出して発音しなければならない。
彼は、『神』（ヘブル語『エロヒム』）という語を書く前に、そのたびにペンを、うやうやしくぬぐわなければならない。
また、彼は、『イェホバ』という神の御名を書く前に、自分の全身を洗わなければならない。聖なる御名が汚されないためである。
文字の形態、文字と文字の間、単語と単語の間、区画と区画の間の各スペース、ペンの使用、羊皮紙の色などに関して、さまざまな厳格な規定が定められた。

一つの巻物の修正は、作業が終了した後、30日以内になされなければならない。もしそうでなければ、それは価値のないものとされた。
一枚の羊皮紙上に一つのまちがいがあれば、その羊皮紙は無効とされた。
　もし、どこかのページに三つのまちがいが見つかれば、その写本全部が無効とされた。
どの単語も、そして、どの文字も、数が数えられた。
そして、もし一つの文字が抜けていたり、一つの文字が余計であったり、一つの文字が他の文字と触れていたりすれば、その写本は無効とされ、すぐに廃棄された。

（"General Biblical Introduction", H. S.ミラー,1960, p.184~185）

■絶対にあってはならないこと

　ユダヤ人の会堂（シナゴグ）の旧約聖書の写本は、上記のような厳格な規定のもとで作られ、継承されてきました。
　彼らは、たった一文字でもまちがいが生じないように、最高で最善の注意を払ったのです。
　彼らにとって、神のことばを自分の考えや思想で書き換えること、すなわち、改ざん、削除、付加などを行うことは、絶対にあってはならないことでした。
　そのような行為をする人には、当然、写本を取り扱う資格も、書き写す資格も、なかったはずです。
　聖なる御名が汚されないようにするために自分の全身を洗うまでに『イェホバ』を恐れ敬う敬虔な人々にだけ、その資格はあったのです！　彼らは、真の新約聖書本文の関与者たちと同様に、「聖書をそのまま受け入れる聖徒たち」だったのです！
　H. S.ミラー博士はこう述べています。

「これらの規定は、極端で馬鹿げているように見えるかもしれませんが、ユダヤ人保管者たち（ローマ3・2）にとって、旧約聖書の聖なるみことばがどんなに神聖なものであったかを示しています。
　そして、これらの規定は、「私たちの手元には真の旧約聖書がある」こと、すなわち、「私たちの主が持っておられ、そして神の霊感によって最初に与えられた旧約聖書と同じものが私たちの手元にある」こと、そのことを私たちに強く信じさせてくれるものです」（同書　p.185）

　モーセの時代から約1500年後に、イエス様は地上に来られました。
　イエス様が、当時の旧約聖書の神のことばについてがどのように証言されたかを、次に見てみましょう。

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聖書の歴史　目次　 D3-【1】【2】【3】